日時:2021年2月27日午前7時30分
語り手:組合長吉田晃氏
聞き手:杉山賢明、杉山(綿引)奈苗
神子田朝市の営業時間内禁煙徹底についての記事を岩手日報さんに掲載していただいた事は既に報告した通りです。
時をさかのぼり、その記事を投稿した週に組合長さんに独自インタビューを行いました。
本日、そのインタビュー記事を組合長さんにお見せして了解を頂いたので公開します。
健康増進法改正により受動喫煙に関する配慮が必要だったとはいえ、規制そのものを朝市発展のためと肯定的に前向きに受け止めていた事が明らかになりました。
多くの人が集まる場所は誰でも気持ちよく利用できるようになるといいですね。法規制があるにせよ、スモークフリーに対して前向きになる動きが各地で起こることを期待します。
組合長さん、ご協力をありがとうございました。
テレビの取材もありました。後日特集されるかもしれません。乞うご期待。
概要
朝市の発展のために禁煙徹底を前向きにとらえていること
禁煙以外に朝市発展のために組合が努力していること
海外や若年層に注目されていること
内容
ーーー今回岩手日報の読者さんからの「声」を受けて、場内の営業時間内の禁煙徹底を実行しましたが、そこに至るまでの経緯を教えてください
禁煙については当初から私も気になっていた。お客様からご指摘いただいたことはあったが、今まで状況を変えるまでには至らなかった。私も喫煙者だが、禁煙すること自体は反対ではなかった。営業時間内でもいいから禁煙にしたいと思っていたが、組合員の中に喫煙者が多かったので、急に変えるのが難しかった。今回岩手日報に記事が載って、お客さんに不愉快な思いをさせて大変失礼なことをしてしまったと思った。今の世の中の流れと逆行していると感じた。私としてはこれをいい機会にさせてもらったとありがたく思った。日中仕事をしている者もいるので、まずは営業時間内の禁煙徹底を実行する。将来的には全面禁煙にする。まずは営業時間内に手をつけていく。今回をいい機会にさせてもらった。禁煙を徹底することをすぐに回覧もして場内放送もした。その日の週末にはもう実行した。盛岡保健所からも記事を読んだという連絡をいただいて※、これはもう急いで対応しなければならないなと思った。食べ物を売っている場所なので、何か起こってからでは遅いと思った。
組合員は私より先輩が多いが、場外に喫煙場所を設けた。喫煙者はどんどん外に追いやられるなと言いながら、ルールを守ってもらっていると感じている。
ーーーすぐに実行できたという状況の背景に組合員との信頼関係を感じます。10代の頃から40年間、朝市とともに暮らしてきたという信頼があるのかと思いました。一方では、禁煙徹底するにあたって反発はなかったのでしょうか
反発は特になかった。少なくとも組合長である私のもとに、そのような反発は来ていない。仕方がないという受け止め方だったように思う。公共施設は駐車場も含めて禁煙になっているから、これが世の中の流れなのだと既に皆分かっているのだと思う。朝市もついに来たかという受け止め方だったと思う。
ーーー公共の場所では受動喫煙防止になっています。朝市も公共の場所に近い場所だと理解していますか
そう思う。盛岡市のホームページにも観光地の扱いとして掲載されている。公共の場所なのだろう。観光名所である。色々なホームページにも掲載されている。Youtubeにもアップされている。全国的に名が知られている。コロナが収まれば治るほど色んな場所から訪問者が来るだろう。インバウンドもある。公共の場所なのでしょうね。
ーーー大きな方向転換を切ったということになりますね
去年まで組合員の立場にあったが、前々代の組合長は父親、その前の組合長は10年以上続いた。組合長の父親には禁煙について何度も話してきたが、なかなか聞いてもらえなかった。誰も手をつけてこなかった。私も気になっていたので、今回このようになってよかった。
ーーー保健所が新聞を見て連絡してきたということですか
その日の9時過ぎに連絡が来た。今朝の新聞を見たかと。その日私はまだ見ていなかったので何のことか分からなかった。電話受付が電話に出ていたので、その間に新聞記事を探してこれのことかと気がついた。岩手県中に知れ渡ってしまったのでこれはすぐに対策を取らなければならないと思った。
ーーー外からの目が入ることによってスピーディーに実行できたということですね
かえってよかった。私はありがたかったと思っている。様々な組合員がいるから、なかなか禁煙徹底できなかったという事情があった。
ーーー朝市に対する想いを感じます
朝市がお客さんにどう思われるかということに神経をとがらせている。コロナウイルス流行の時もそうだった。コロナウイルス感染の流行後、朝一の来客数は増えている。周りのイベントが全部中止になったものだから。屋外というイメージもあるだろうから。朝市は店もいろいろあるし、朝市は営業しているからお祭り感覚で行ってみるかというお客さんが多いように思う。マスコミも多分ネタに困っているのだと思うが、新聞やテレビがとにかく朝に来た。お客さんがそれを見てまた来るという繰り返しだった。それもあって週末は1000人以上の来客がある。岩手県はコロナ感染者数がゼロだった時期もあり、他県からの来客もあった。主催者としては嬉しい反面、怖いという面もあった。
ーーーそのためか朝市の入り口での感染対策を厳しく徹底しているように思いました
できることはやろうという思っている。組合員がマスクを忘れた時は最低限のマナーだと思っているので、事務所の方で有料だがマスクを用意している。
ーーー禁煙したことによって来客数は減りましたか
先週や今日(2月27日)の状況を見る限りでは影響はない。正直なところ影響はあるかと思っていた。苦情の電話などもあるかと思ってもいた。しかし、そのようなことはほとんどない。
ーーー逆に新しい客層があるのではないかと思いますが
恐らくこれから家族連れが増えてくるように思う。朝市が禁煙になったことによって安心してもらえるように思う。
ーーーかなり前向きですね
そうです。実は「みんなの健康らぼ」が医師だと聞いて、いつものお客様から、この前の記事は素晴らしかったという反響までいただいている。お客様の中には病院の医師はいる。「よくやった」と二人くらいから感想をもらっている。医師はそういう点を敏感に見ているのだなと思った。
いま寒いからお客さんの出もなかなかないですが、暖かくなるにつれて夜明けも早くなり、コロナウイルス感染が収まればまたさらに来客もあるだろうから、これまで以上のサービス改善や朝市の発展のために努力していかなければならないと思っている。皆様にまた来ていただきたいと感じている。
ーーー去年は新しい店舗が13もあるので、絶え間なく努力していますね
それまでは後退ムードだったが、今度新しく役員になった者は朝市をよくしたいという思いが一緒である。その一環で店舗を募集しようということになった。たまたまテレビ取材で理容師が欲しいと話したら応募者があった。イベントが中止になって生産者も行くところがなくなった。朝市は屋根もあるから利用したい店舗があるようだ。ここはいいねと気に入ってもらっている。お客さんも色んな店があるから喜んでもらえる。
ーーー一方で朝市は危機的な状況だったことはありますか
組合員の平均年齢は80−90歳である。毎年2−3人ずつお亡くなりになる。あるいは高齢になって運転ができず移動手段がなくなって店を続けられず引退なさる。店を継ぐ者もいない。この5年間で65名ほど辞めた方がいる。その一方で5年間で新規は1店舗しかなかった。その1店舗も私の紹介であったので、その方がいなかったらゼロ。今回たまたま私が組合長になって、これまで先代が実施してこなかったことを実施している。家賃収入でこの朝市は成り立っているので新規がないと存続できない。この神子田朝市は単に朝市というものではなく「昭和」感が滲み出て懐かしさがある。
ーーーそのためか最近は外国人のYoutubeに朝市が登場しています
有名なYoutuberのようだ。JR東日本の宣伝広告らしい。観光地でカメラも入れる場所として選ばれたのでしょうね。
ーーー世界にアピールできますね
そうなるといい。それこそそのYoutubeを見てオランダから手紙が来た。Mikoda Morning Marketと題して応援レターを送ってきている。
ーーーファンがどんどんついてきていますね
全国の朝市を卒論として研究している大学生が北海道から来て、盛岡に泊まり込んで2週間自分を隔離したのちに取材して、神子田朝市が一番朝市らしかったと言い残していった。
ーーー風情がありますね。組合員の人情も感じます
ここに来ると元気をもらうという方もいる。スーパーマーケットだったら買ったらすぐに終わりでサービスがないが、朝市だから生産者の方と会話できてオマケもあって、独特の雰囲気や良さがある。ジャンルを超えた店のラインアップもあって面白い。
ーーーぜひ存続だけでなく、ますます発展していただきたいです。今日は本当にありがとうございました
※追記 2021年3月14日追加インタビューより
盛岡保健所からの「指導」とは、記事を見たという電話連絡であった。具体的な指導内容はなかった。吉田組合長理事長がその後すぐにとった受動喫煙防止対策は、場内の営業時間内の禁煙徹底の実施と組合員への呼びかけ、および場外喫煙所の設置であった。
文責:杉山賢明
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