健康的なまちづくりの推進に関する協定  締結3周年 紫波町共催で活動報告会

イベント,協定・協働

紫波町と活動報告シンポジウムを共催

みんなの健康らぼ(みんらぼ)は、2019年に紫波町・東北大学(大学院歯学研究科・スマート・エイジング学際重点研究センター)と4者協定「紫波町の健康的なまちづくりの推進に関する協定」を締結してまもなく3年を迎えます(締結シンポジウムはこちら

そこでこの度、紫波町との共催シンポジウム「あえて医療介護側から考える地域のあり方~その後」を開催し、3年間にわたって実施してきた公衆衛生活動・地域活動・情報発信について報告しました(活動一覧はこちら

開会の挨拶 ー熊谷町長

紫波町と一般社団法人みんなの健康らぼ(みんらぼ)は、東北大学とともに、健康的なまちづくりの推進を3年間実施してきた。その中心となったのは、星真土香氏の、畑を活用した「暮らしの保健室」活動であった。これは紫波町独自と言える、コミュニティに根ざした地域保健活動であり、非常に素晴らしい取り組みであった。引き続き、こうしたコミュニティ活動を継続できれば、より紫波町らしく「暮らし心地の良いまち」への発展につながることを期待したい。

左から星真土香(紫波町地域おこし協力隊・コミュニティナース)・杉山賢明(みんらぼシニアフェロー)・杉山麗子(みんらぼ代表理事)・小坂健(東北大学教授)・熊谷泉(紫波町町長)・綿引奈苗(みんらぼアートフェロー)・出野紀子(studio-Lコミュニティデザイナー)・坪谷透(みんらぼ理事)

多様な活動実績を報告 ー坪谷理事

本協定に基づいて様々な活動を実施してきた。大別すると、1)地域おこし協力隊員である星氏による「暮らしの保健室」の実施・支援、2)新型コロナウイルス感染症流行に対する感染対策の啓発活動、3)公衆衛生・紫波町の魅力に関する啓発活動・情報発信、4)人生会議の啓発活動となっている。1)4)については後述するので、2)3)について詳述すると、

2)新型コロナウイルス感染症流行に対する感染対策の啓発活動

まず、「新しい生活様式」に基づく紫波町地域活動マニュアルを作成した。さらに、手洗い・手指消毒など具体的な感染対策を啓発するためのYouTube動画(手指消毒手洗いマスク)も制作した。また、コロナ禍においても人のつながりは大切であることを謳った地域おこしラジオ体操は1回目の緊急事態宣言から3年が経ったいまも継続中である。加えて、岩手県内の飲食店の感染対策実態調査を日本公衆衛生学会で発表した。

3)公衆衛生・紫波町の魅力・地域医療に関する啓発活動・情報発信

公衆衛生活動として、健康の社会的決定要因についての講義形式YouTube動画も公開した(その)。その取り組みに対する好事例の紹介として、日本プライマリ・ケア連合学会学術大会にてシンポジウムも主宰した(前編後編)。

また、紫波町の歴史哲学魅力に迫る動画コンテンツも配信した。これらの取り組みの一つとして、紫波町歴史研究会と協定締結するに至っている。

4)「みんらぼカード™️」が紫波町ふるさと納税のリターンに

みんらぼがこの3年間、製作に注力してきた人生会議体験ゲーム「みんらぼカード™️」についても報告した。同カードは紫波町ふるさと納税のリターンにもなった。2021年度において約10部の注文があり、紫波町に一定の貢献を果たしていると考える。

「畑の保健室」の可能性について報告 ー星 地域おこし協力隊

「暮らしの保健室」の構想は、看護師として病院や在宅診療所で働いた経験に端を発する。そして、この実現こそ、紫波町地域おこし協力隊に着任する大きな動機になった。

「暮らしの保健室」の目的は、誰でも気兼ねなく健康について相談できたり、安心して居られる場所となることであった。

オープン当初からこの理念に賛同する者で保健室はあふれ、利用者数はのべ500人にのぼった。心の問題で悩む方々も利用することができた。

2021年度には「畑の保健室」も開設した。畑作業を通じて知り合った者どうしが、畑でコーヒーを飲んだり、気が向いたときに野菜を手入れしたりすることが、利用者の多くの心の安らぎとなっている。のべ500人程度が利用したこの取り組みを通じて、「畑には可能性しかない」と手応えを感じている。これらの活動は岩手県内の新聞・テレビだけでなく、地域おこし協力隊の全国ネットワークなど各種メディアで取り上げられるに至った。

講演後の質疑応答で、「これらの活動は『社会的処方(リンク)』の一つと言える」という感想をいただき、会場内の多くの参加者から賛同の声があがった。

みんらぼカード™️の誕生秘話を公開 ー杉山フェロー

みんらぼカードは人生会議をより実践しやすくするためのカードである。人生会議とは、人生の最終段階における医療やケアについて会議することである。誰しもいずれは人生の終いを迎えるからこそ、どのようにライフストーリを閉じたいかを、大切な人とあらかじめ話し合っておくことはとても大切である(詳しい解説はここ)。しかし、人生の終いと聞くと、どうしてもネガティブな気もちになってしまう。みんらぼは、この課題を解決するために、トランプカードのゲーム性を活かして人生会議を啓発することを思いついた。折しも、百円ショップでトランプカードを見かけたことで、その製作会社に制作を依頼する方策が立った。

同じ頃、みんらぼカード初期版を用いて、数名の町民にゲームを体験してもらっていた。その中で、きのこに詳しい町民がアイディアを提供してくれた。それは、きのこのイラストも加えると、きのこファンが飛びついてくるというものであった。このアイディアは、行動経済学的にフックをかけることに通じるため、即座に採用された。こうして、きのこ研究会の会長の協力も仰ぎながら、みんらぼカード54枚それぞれに、厳選されたきのこが掲載されるに至った。これがみんらぼカード™の誕生秘話である。

現在、このカードに秘められた様々な要素を活かして、ソーシャルマーケティングを駆使した公衆衛生活動に挑戦している。その一つとして、Facebook広告を用いた人生会議の啓発活動を実施した。日本プライマリ・ケア連合学会でその実施状況を報告し、大きな反響を読んだ。これを確かな手ごたえとして、今後もカードの普及を目指していく。

発表後、聴衆はこの自由な発想にインスピレーションを受けたのか、次のシリーズに期待する声などがあがった。このようにして自由な議論の呼び水となるのも、みんらぼカードが秘めている可能性なのかもしれない。

みんらぼカード™️ 日本緩和医療学会優秀賞を受賞 ー綿引フェロー

みんらぼは、紫波町日詰さんさん朝市で、みんらぼカード™ を用いた人生会議啓発活動を実施してきた。この活動を日本緩和医療学会で報告したところ、学会優秀賞を受賞した。ネガティブなイメージを持ちやすい人生会議は、医療者にとっても、患者に勧めにくい取り組みである。

そこで、より多くの人が人生におけるより豊かな選択肢を連想できるよう、みんらぼカード™は開発された。このカードをなるべく多くの人、とりわけ愛着の持てる地域の住民に届けるため、朝市で出店するに至った。

コロナ禍のために感染対策をとりつつ、少しでも日常を取り戻そうと、出展者ならびに参加者が朝市にたくさん集まった。みんらぼの店頭で約100名に呼びかけ、そのうち関心を示して説明を受けた者が50名程度、デモ体験した者が20名程度、購入者が6名であった。購入数は絶対数では少ないものの、声をかけた100名を基準とすれば、大きな成果だったと言えた。同様の購買行動現象は、緩和ケア病棟でゲーム体験したときにも得られた。

このことから、Social Network Serviceを利用したみんらぼカード™の普及啓発は欠かせないが、実際に体験できることの重要性が示唆された。今後もこのような啓発活動を継続していく。

コロナ禍のコミュニティデザイン実践例「交換日記」を紹介 ー出野デザイナー

みんらぼの地域おこしラジオ体操の理念と同様に、コロナ禍にあっても人のつながりを失ってはならないと考える。その考えのもと、神奈川県藤沢市などで、市職員が住民とともに「交換日記」を実践することを、コミュニティデザイナーとして提案した。

新型コロナウイルス感染症の流行前であれば、保健師をはじめとした市職員が健康教室を通じて、住民の健康を把握できた。その活動が自粛されて以降、交換日記を通じて、体や心の健康を把握していく取り組みがなされた。当初は、日記に何を書いたら良いか分からない者が続出したが、徐々にお互いの声をやりとりする間に、書き込みの数や、書き込むペンの色の種類が増えるなどして見た目にも賑やかになった。現在、この交換日記が職員や住民の意識にどのような効果を与えたのか検証中である。

コロナ禍で薄れてしまった人どうしのつながりをいかにして取り戻すか、あるいはどのようにすればつながりを意識できるか、現在も模索している。

総括 ー小坂教授

このコロナ禍で互いに苦しい状況にある。しかしながら、人類の歴史にときおり「毒」が必要になる。偶然にも、みんらぼカードに取り上げられているきのこには、毒がある。これが今回の紫波町と東北大学・みんらぼの協定に基づく活動にとって、何かしらの運命を示唆しているように思えてならない。今後のさらなる活動に期待する。

Special Thanks to Steven for the BGM

閉会式でSteven氏が素晴らしいピアノ演奏を添えてくれた。ここに感謝する。