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野菜の処方 東北プライマリ・ケア連合学会で報告

出版・研究

日本プライマリ・ケア連合学会東北支部の総会で「野菜の処方 Farmacy」に関する活動を報告しました。以下、概要です。

演題名:農医介護連携による野菜「処方」”farmacy”に関する活動報告

背景:高齢者において生じやすいポリファーマシーはプライマリ・ケア医が適切に介入すべき課題の1つである。しかし、実際には患者の疾患に対する解釈モデルや処方に対する満足感などが影響するため、減薬が難しいことも少なくない。当院では、患者・医師双方が利するように、減薬とともに野菜を「処
方」する活動“farmacy”を行ったので紹介する。
方法:演者らがかかりつけ医となっている利用者20名が入居するグループホームに2020年5~7月野菜を提供(以下「処方」とする)した。具体的には、演者が地域活動の一環として農業指導を受けている生産者を野菜仕入れ先として、グループホーム管理者に紹介した。演者は出退勤中に生産者の収穫した無農薬野菜を、グループホームに運搬した。演者が自ら収穫した野菜をグループホー
ムに「処方」することもあった。
結果:同期間中、毎週約20種類の野菜を「処方」した。グループホーム利用者・職員ともに新鮮な無農薬野菜を食することができ、その喜びを生産者との交換日記で表現するように依頼したところ、利者・職員の笑顔が10ページに渡って描写された。この間に減薬できた利用者は16名であった。この野菜処方によって三方よしの世界を実現できた。すなわち、出荷量が小さな生産者は安定した供給先を確保できた。また、包装袋が不要であったため、出荷コストを削減でき、エコフレンドリーでもあった。一方、グループホームは本来高価な無農薬野菜を安価に仕入れることができた。社会疫学的には社会経済的地位によって野菜消費量に差がみられるが、今回の取り組みは格差是正に結びつきうることが示唆された。また、野菜の仕入れにかかる職員の労働時間を削減でき、シェアリングエコノミーの実現可能性もみられた。「処方」した医師(演者)は診療だけでは味わえない満足感を得た。これは半農半X(ここでは半農半医)の体現であり、医師過疎地域における地域医療の魅力として発信できることが示された。
結論:多くの高齢者が病気や障がいを抱えている現代において、世界保健機関の定義する「健康」そのものが目標ではなくなってきている。むしろ、病気や障がいがあろうと、心豊かな生活を送れるような社会支援が求められる。その実現のためには、従来の医療介護従事者の連携の枠を超える必要がある。今回の医師による野菜の「処方」“farmacy”は、ポリファーマシー解消につながるだけでなく、患者・介護従事者・医療者・農業生産者の有機的なつながりを醸成し、それぞれが単独で事業を行っていたときには生まれ得なかった、食の大切さ、会話の広がり、そこから派生する生活の豊かさ、地域で生きることの喜びを分かち合うことができた。

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